ヤミナベ・ゲーム1順目

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 こたつが、あった。  こじんまりとした部屋の真ん中にかなり大きなこたつが置かれている。  8人全員が入れるほどの大きさだった。  そしてこたつの上にはそれに負けない程の大きな土鍋。  下にはコンロが置いてあって、ぐつぐつと音を立てている。  そして部屋の隅には小さなテレビが1台―― 『――お待たせしました、ご主人様』 「来たよ」  唐突にテレビの電源が入りそこから聞こえてきた声にエーガがうんざりした言葉を返す。  そこには“執事”が映っていた。 「何なんだよここは」 『これより、ビースト・ゲームは一時中断いたしまして、別のゲームを開始いたします』 「はぁ?」  一同を代表するように、エーガがテレビに詰め寄る。 「ふざけんなよお前。あっちこっちゲームだゲームだって、参加させられる方の身にもなってみろよ!」 「そうですよ。これではあまりにも振り回されすぎます」  真那斗もまた抗議の声をあげる。 『ご安心ください。こちらはゲームといっても、休憩のようなものですから』 「休憩? 2時間からとか?」 「休憩といいますが……ルールや罰ゲームのようなものはあるのですか?」  エーガの微妙な反応には気付かず、真那斗が執事に食い下がる。 『今回は、ビーストゲームのような命のやりとりや交わるといった行為は必要ありません』  その言葉に、ほっと息が漏れる。 『今回のゲームは“闇鍋”です』 「あぁ?」 「や……みなべ?」 「闇鍋って、アレ……?」  だが執事から聞こえた単語に全員が顔を見合わせる。 『はい。皆様がそれぞれお好きな具材を持ち寄って鍋に入れ、それを食べるという――』 「知ってるよ! 知ってるけど……どうすんの?」 「僕たちは何も持ち合わせがありませんが……」 『そこで、こちらの画用紙です』  執事はテレビ画面の中からこたつの上を指差した。  よく見ると、そこには画用紙と黒いペンが積んである。 『ご主人様方にそれぞれ3枚ずつ画用紙を用意してあります。それにひとつずつ食べたいと思う具材をご記入ください。書かれた具材を鍋に入れ、ご用意させていただきます』 「へ――」 「本当にそれだけ?」 「食べたいもの? 何でも入れてくれんの?」  本当にただの闇鍋らしい。  いや、好きなものを入れてくれるというのだから、俺たちにとっては歓迎すべきゲームなのかもしれない。 『ただし――』
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