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ぐぅ……
その沈黙を打ち消すように小さな音が聞こえた。
腹の音だ。
「……」
「……」
誰の音だったのだろうか。
全員が気まずそうに周囲を見回す。
……もしかしたら、俺の音だったのかもしれない。
いつの間にか、急激に空腹を感じるようになっていた。
胃袋の中が空っぽで、一刻も早く何かを入れたいという猛烈な欲求が湧きあがる。
「なぁ、別に細かいことはいいじゃん。俺腹減ったよ」
戒が空気を読まず――いや、この場合正しい空気というべきなのだろうか。
「そうだなぁ……とにかく早く鍋食いたいし」
「本当にいいんでしょうか……」
戒の言葉にエーガが頷き、真那斗は気遣わしげに瞳を伏せる。
「……ひとまず、この周辺には何も問題になるものはなさそうだ」
一人黙ってこたつや鍋を確認していた旭が口を開いた。
鍋の中にはお湯とこんぶが入っているだけ。
こたつは掘りごたつになっているらしく、中からほんのり温かい空気を感じた。
そして同時に、この部屋の妙な寒さに気付く。
こたつと鍋に丁度いい温度に調整してあるんだろうか。
「こたつ……入ろうか?」
俺の提案に誰も文句をいう者はなかった。
そして……つい先程までデスゲームの参加者だった俺たちは、鍋を囲んでこたつに入るという奇妙な状況に身を置く事になった――
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