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「はい、どうぞ」
「あ、僕がやります」
真那斗がこたつの上に乗っている画用紙を全員に配り、夕凪がそれを手伝ってペンを配った。
俺たちの手元には画用紙が3枚とペンが1本ずつ。
「……どんあ状況だよ……」
シュールな絵面にエーガがため息をつくが、それに答える者はいなかった。
「えーと、それでは各自食べたいものを書いていきましょうか」
なんとなく真那斗が仕切り始める。
「ええと……」
「うーん……」
ペンを持って止まったままの面々から唸り声が聞こえてきた。
かく言う俺もその一人。
いざ書けと言われると、なかなかいい物が思いつかない。
まして、鍋に入れるとなると……
「よし、俺はこれ!」
一番最初に声があがったのはエーガだった。
画用紙には『まつざか牛』と書いてある。
「どうだ! 本気で食べてみたい高級食材!」
「せめて漢字で書こうよ……」
「いやー、“さか”の字がどっちか自信なくってよ」
俺の突っ込みに笑って返す。
「間違ったらなんか変なモン食わされそうじゃね?」
「いや……そもそも松阪牛は“まつさかうし”が正式名称では」
「まつさかぎゅう、じゃありませんでしたっけ?」
「え?」
蒼央と真那斗の訂正にエーガの顔色が変わる。
と、急に執事の声がした。
『問題ありません。“松阪牛”として入れさせていただきます』
「そ……か、良かったー」
はぁとエーガが脱力したように溜息をついた。
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