ヤミナベ・ゲーム1順目

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「本郷先輩……」  エーガと蒼央、そして夕凪の言葉を受け、真那斗は深々と頭を下げる。  そのいたたまれない様子にエーガたちも追及するのを止めていく。 「……ま、そうじゃないと闇鍋じゃねーよな」 「……別にチーズが入ってても問題ないんじゃねえの」 「……すみません」  しかし真那斗の発言で言いやすい雰囲気になったのか、戒と旭、そして夕凪が次々と画用紙を広げて見せる。 「ああ、別に好きなモン入れればいいんだよな!」 「逆に、それしか書けないようだ」 「はい。本当に食べたいもの以外はこの画用紙には書けないようになっているようです」 「え、そうなの?」  旭と夕凪の言葉に戒が驚いたように画用紙を見直す。  この空間でも相変わらず不思議な力は健在らしい。  俺も、適当に鍋に合いそうな具材を書こうとしてもどうしても記入することができなかった。 「じゃあ俺は『からあげ』!」 「鍋ですよ?」 「食べたかったんだよ!」  元気よく画用紙を見せたのは戒。  もう、鍋とかそんなのは気にしていないらしい。 「まあ……別に入っていても問題ないんじゃないでしょうか」  負い目がある真那斗がフォローする。  まあ実際、そう困った食材というわけでもないし…… 「俺は『メロンパン』」 「……僕は『ハーゲンダッツラムレーズン』」 「よし次に行こう」 「……ってちょっと待てお前ら!」  さくっと画用紙を出して終わらせようとする夕凪と旭にエーガの教育的指導が入る。 「なんかすごい問題のあるモン出して何事もなく終わらせようとするなよ!」 「これしか思いつかなかった」 「……本当にすみません……」  悪びれることなく答える旭と、俯く夕凪。 「急にどんな方向の鍋になるのか見えなくなりましたね……」  眼鏡を押さえ難しい表情を作る蒼央。
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