二人の転機

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いっそ南部鉄の鉄瓶ならお父さんも大満足の重量になっただろうけど、結局、引出物は彼女が選んだ伊万里の小皿揃になった。 一つ一つに吉祥柄の瓢箪が柄違いで描かれていて、渋いけれどなかなか可愛らしい。 猫柄でないことにこっそり安堵する。さすがに僕も同僚にファンシー趣味だと誤解されたくない。 「でもあれじゃお父さんにはまだ軽いよね。メロンでも足しとく?」 彼女は可笑しそうに笑った。 「前にメロンを頂きましたけど、一人だと食べきれなくて」 「僕が前に出た披露宴では重さより大きさが重要らしくてね、鰹節とポン菓子が入ってたよ。独身男にポン菓子は微妙だったな」 そんな話をしているうちに、車はマンションまで帰ってきていた。 このあとは僕の両親とここで落ち合って夕食に出掛ける予定だけど、まだ一時間は余裕がある。 内心ほくそ笑みながら何食わぬ顔で立体駐車場の入口で車を停め、エンジンを切った。
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