二人の転機

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駐車スペースまで来ると、僕も意地悪とおふざけは引っ込めて真面目モードになった。 「ブレーキを緩めて。アクセルは踏まずにね。……たぶんこの方向から斜めにバックすると入れやすいよ」 隣からハンドルを操作してちょうどいい位置につけてやる。 「ストップ。このぐらいかな?」 「は…はいっ」 しかし伸ばした腕が彼女に触れる度、実は早くも真面目モードは危うくなっていた。 変態教官じゃないんだからと自分で突っ込む。 行楽シーズンの休日なので駐車場はみな出払っていて、車の出入りなく静かだった。 練習には格好の状況だったけれど、おふざけを自制するにはきつい。 「こんな細い溝にこんな大きな車、入れられません…」 けれど彼女がギアをバックに入れて僅かに進んだだけで止まってしまったので、不適切なあれこれを追い払う。 「逆に溝があるから安心だよ。間違った位置だとタイヤがつっかえて進めないからこすったりしないし」 そこからは彼女の真剣な努力のせいか、それとも救いようのないドライビングセンスのせいか、僕もすっかり集中して真面目に教え続けた。
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