二人の転機

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僕の車は……というより最近の流れなのか、前のモデルよりもアクセルやブレーキが軽くなっていて、軽く踏んだだけで反応する。 バックが苦手な彼女は細かいハンドル操作とブレーキの両方を同時に行うのに四苦八苦した。 それでも辛抱強く練習を続けているうちに徐々に要領を掴み、僕がハンドルを修正しなくてもよくなった。 「もう大丈夫だね。最後のおさらいに、僕は降りてるから一人でやってみてごらん」 「ハイッ」 彼女の可愛いところは、何でも素直なところだ。 憎たらしい元敵である僕のスパルタ指導にも逆らわず健気についてくる。下手だけど。 「もう少しハンドル切って……。はい、戻し始めて」 口出しするまいと思ったけれど、助手席の教官がいなくなると操作が自信なさげに不安定になる。 溝や鉄板で足元が悪いので、僕は車の真後ろに回って誘導した。 それが間違いだった。
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