二人の転機

3/23
2941人が本棚に入れています
本棚に追加
/23ページ
ランチは郊外まで足を伸ばしたので、そのままさらに田舎道に入り、小高い展望台の近くにある駐車場で車を停めた。 展望台といっても何のために作られたのか疑問なほど見るものが何もない眺めなので、当然誰もいない。 『ここなら誰も通らないし広いから大丈夫だよね。はい、始めようか』 僕にキーを渡された彼女は溜め息をついてから、ためつすがめつキーをひっくり返して眺めた。 それから真剣な表情でダッシュボードを眺め、今度は少し困った顔になってまたキーに視線を落とした。 勇気が出ないのか気合でも入れているのかと待っていると、突然彼女が思いきったように深呼吸した数秒後、ガゴン、と車の後部が揺れた。 『……』 彼女の背筋がギョッとしたように伸びたあと、これまた小人のように縮んだ。 キーにあるトランクルームを開けるボタンを間違えて押したらしい。
/23ページ

最初のコメントを投稿しよう!