二人の転機

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でも隣の彼女はそうはいかず、どっぷり落ち込んでいじいじと顔を上げてくれない。 なかなかにSっ気を刺激してくれる彼女にさらなる楽しみを思い付いた僕は、今のうちに少し気分転換してもらおうと話を変えた。 「席次表の材料はそれでいい?印刷は僕の部屋のプリンターを使うといいよ」 「はい、ありがとうございます。材料もこれで大丈夫です」 彼女はすぐにぴょこんと顔を上げ、嬉しそうにニコニコした。 席次表はホテルに任せず、彼女が作ることになった。 十分に自作できる席次表に結構な金額が加算されているのを見て、倹約家で手作り好きな彼女はムズムズきたらしい。 貧乏臭くて恥ずかしく思わないですかと彼女は遠慮していたけれど、彼女が楽しいなら僕は何でも賛成だった。 「そういう作業もあるし、早めに引っ越して来たら?今の部屋の家賃ももったいないし」 「はい…そうします」 少し気が早い僕の提案をどう思ったのか、彼女は控えめに答えてから窓の外を向いてしまい、表情が見えなくなった。
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