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彼女が眺める助手席サイドの窓からは、午前中に訪れたホームセンターが見えていた。
あの中にいる猫たちのことを考えているのだろうか?
店員に渡された猫を愛しそうに抱いていた彼女の表情を思い出す。
「それはそうと、心残りなんじゃないの?」
「何がですか?」
「ほら、ペットショップの。僕のせいでごめんね」
「ああ……いいんです」
彼女はこちらを向いてニッコリしながら首を振ったけれど、僕としては彼女に無理に笑わせているのが残念でならなかった。
というのも、僕が隠していた大きなマイナスポイント──猫が苦手というのが、彼女にばれてしまったのだ。
「ごめんね。気に入ってたのに」
「いいえ、いいんです。どのみち海外赴任があるし無理なの分かってましたから。それに……」
そこで彼女は少し口をつぐんだ。
少し震えた声に何かを感じ、僕も黙って彼女の言葉を待つ。
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