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さわさわと、風の流れる庭で二人の女性が連なるながら歩いていた。二人はよく似ており、違いは年齢くらいしかない。
1人は三十代の妙齢の女性で、もうひとりは十代の可愛らしい少女だった。母と子、彼女たちはそう見えるだろう。
しかし、世間的には彼女たちは血のつながりのない赤の他人となっているのである。『聖女の子供はいない』となっているからだ。
不意に聖女は足を止め、屈み込む。その様子を見ながら少女は口を開いた。
「聖女さま、私来週から魔法学院に通うことになりました。聖女さまが口添えしてくださったのですよね?」
「ええ、あなたには必要なことだと思ったので。」
スラリと立ち上がる聖女のの手には、リンドウの花が握られていた。
「あなたは、小さな世界に閉じ込められてはダメなのです。ですが、彼らはそれを受け入れられない。聖女のたる私の言葉すら信じられないのですよ」
哀れですとつぶやいた。しかし、聖女が信用されないことに、神の言葉に背くこととは別に理由があった。
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