0人が本棚に入れています
本棚に追加
聖女は先ほど摘んだリンドウの花を、少女の髪に挿す。白髪に青い花がとてもよく似合っていた。その姿に満足したように微笑む。
「一つ約束して下さい。学院にいる間に、あなたが心から大切に思えるモノを見つけなさい。それが出来れば心配はいらないですから」
「大切な…モノ、ですか?」
少女の愛らしい頬が、しなやかな聖女の手に包み込まれる。額と額が合わさり、聖女はつぶやく。
「ええ、でも大丈夫あなたならきっと見つけられます。私の言葉は気にせず、楽しい生活が送れることを心から願っていますね。」
額が離れ二人は微笑み合う、とても短く儚い優しい時間が過ぎていく。そして、もう少しで終わりを告げる…。
耐えきれないと、言ったように聖女は少女を抱きしめる。強く抱きしめる。
「フィーリアさま、そろそろお時間です。」
そう言って、男性が入ってきた。整った顔立ちをしているがその表情は険しく現状をよしと思っていないのはすぐにわかる。
もう、タイムリミットが来てしまった。聖女は終わりを告げる彼が好きだはなかった。
最初のコメントを投稿しよう!