決着

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決着

れから三日たったある日、今日は外もひどい雪で予約もキャンセルとなり店も暇なことが予想された。今日の厨房のバイトも芳樹なのでたくさん仕込みができると思い着々と準備を進める。数時間が立ちいつもなら一番客の来る時間も過ぎ片づけを進めることにした。こうゆう暇な日は重雄の機嫌が悪い。ただでさえ悪いのに女将か重雄の作った飯に文句をつけたため八つ当たりがすごい。どうもパスタを作ったのだが焼き魚が食べたい気分だといわれ完全にしりに敷かれている重雄は怒りながらもそれに従うしかないようだ。こちらとしても一度焼き台を洗ってしまっているのでできれば使いたくないのだが頼まれてしまえばどうしようもない。しかも重雄はまだ片付けが終わらないのかといったような態度を見せてくる。芳樹も朝からどこか様子がおかしい感じがしていた。元気がないというわけではないのだがどこかいつもと違う感じを幸助は感じ取っていた。重雄に文句垂れられながら仕事するのもかわいそうなので芳樹に今日は上がれとつげ賄いを用意してやった。今日はポトフだ。ほかのバイトの子にはあまり評判が良くないことは知っているが芳樹はこれを好きだと言っている。なのでバイトが芳樹だけの時はポトフにしている。作るのも簡単なので楽させてもらっている。賄いを盛り付け終えたあたりで焼いていた女将用のサバが焼きあがった。重雄は自分の包丁を研ぎ終えているので幸助達の使う従業員とバイト用の包丁でレモンをスライスしてサバに添えて女将のとこにもっていった。何かものを切ったら切れ味が落ちるのを防ぐためなるたけすぐ濡れ布巾で包丁をぬぐうよう幸助に教えたのは重雄なのだが自分の包丁じゃないとそんなことはせずほったらかしだ。しかも錆びやすいレモン果汁がびったりとついているのにと幸助は少し乱暴に拭き取ると左手の親指を切ってしまった。「痛ってぇ」流れ出る血を見ながらふつふつとイライラが募ってきた。プルプルと全身が怒りで震える。とっさに包丁を持ち上げてカウンターに向かって歩き出した。もう何も考えられない。ただ頭にきている。頭に血が上っている。理性はぶっ飛んでしまった。今日こそ殺す、殺す、殺す。
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