2人が本棚に入れています
本棚に追加
その時丁度賄いを食べ終えた芳樹が帰った客の皿まで片づけて厨房に帰ってきた。ふと我に返って笑ってしまった。芳樹はよくわからないといったような顔をしてたくさんの残っている洗い物を自主的にやってくれている。もうタイムカードを切っているのにありがたい話だ。そんな芳樹を見ていると自分が恥ずかしくなった。「おい、幸助」とふいに重雄に呼ばれびくっとした。あまりにもタイミングがタイムリーすぎて動揺を隠すことができなかった。しかし、幸助の前に差し出されたのは一本の瓶ビールだった。なぜこのタイミングかわからないがいつもありがとうといって重雄は幸助に瓶ビールを一本渡してくれた。たまにこうゆうことをしてくれる人だということを忘れていた。幸助は初心を思い出したような感じがした。これからも頑張ろうと包丁を研ぎだした。「芳樹、そっちのホルダーの包丁もとってくれないか。」今日は普段やらない包丁まで研いでおこう。そう思ったのだ。クシャ・・・・・。急に背中が熱くなった。何が起きたかわからない。クシャ・・クシャ・・。何かが刺さっていると気が付いたときブシャァァァァァ。血が噴き出した。息が苦しくなり視界もぼやけてきた。足に力が入らなくなりひざから崩れ落ちた。口からもたくさんの血がこぼれ出た。幸助は薄れゆく意識の中で女将の叫ぶ声と重雄の怒鳴り声がきこえ、見たこともない恐ろしい顔をした芳樹が一瞬見えたとき自分の今までの勘違いに気が付き後悔をかんじた
最初のコメントを投稿しよう!