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執着
〔なぜ急にあんなことをしたんですか?〕
「急ではありません。ずっと積もり積もったものだったと思います。表面張力で釣り合っていたコップに一滴の水が落ちた感じです。」
〔その一滴の水は何だったんですか?〕
「その日、今年度での卒業が事実状厳しくなりました。今まであの店にたくさん捧げてきました。自分のしたいこともできず安い時給で便利に使われてきました。それのせいにしたくないとずっと思っていました。でもテストの前の日も出勤を頼まれそのテストの日ですら出勤するといったようになって、少しずつ単位を落とすようになりました。その結果留年が決まりました。あの店の奴らのせいだと感じました。毎日毎日イライラをぶつけられてもううんざりしていました。賄いのポトフを見たときが一滴、僕がただ働きで皿洗いをしているときに重雄さんが幸助さんにビールをあげていたときがとどめの一滴でした。自分の中の何かが崩壊しました。」
〔なるほど、後悔していますか?〕
「はい。」
〔なんであんなことをしたのかと?〕
「そうですね。あの日給料日だったので。はは。」
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