見上げた空

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 空を見上げる。  今日もいい天気。まだ2月の空気は寒いけど春分は過ぎてるからきっと暖かくなる。  一番費の短い冬至と春分が離れているのは地面が熱を保管しているからだ。地面の熱と太陽からの熱が拮抗し始めて初めて大気は暖かくなる。数学的に言うとdtemperature/dtimeが初めて正になる。  微分積分学は好きだ。世の中を単純な方程式で記述することができる。動いている物事はその殆どがΔtで微分することができるし、微分した結果は美しい線形か、自然の理のlogに書き下すことができる。  雲が流れていく。西高東低の冬型の気圧配置にあって、関東地方の空は雲が薄い。 「歩(あゆむ)、置いてくよ」  視線を見下ろした。往年のSL機関車C11が置かれた小高い山の公園。裏手には図書館とプラネタリウムがある。でも、プラネタリウムは今日は休館。今時230円なんて破格の値段で投影を見ることができるプラネタリウムはクラシカルなメカと肉声の解説も相まってお気に入りの施設の一つだ。コストの掛からないクラシカルだけど、客のこない平日は閉まっている。平日の午前中は小学生で賑わうが、彼らにこの価値が判るのはもう少し大人になってからだろう。
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