銀縁眼鏡と黒縁眼鏡

3/21
前へ
/21ページ
次へ
「気分、どう?あたま、痛くない? ……すぐに朝ごはんにするから。 ちょっと待ってて」 そう云うと男はキッチンで作業を始めた。 待っててと云われても、なにか落ち着かない。 「落ち着かない?……だよね。 ここ、座りなよ」 勧められるままにキッチンに彼が置いた椅子に座る。 そのとき初めて、彼が眼鏡をかけていることに気が付いた。 「この眼鏡って……あなたの、ですか?」 「そんなの持ってたんだ。 ……残念ながら、違うよ」 黒縁眼鏡の奥の目が苦々しげに歪められたかと思ったら、次の瞬間にはそんなことなどなかったかのようににっこりと笑う。 「……ここはどこですか?」 「僕の叔父の別荘」 「あなたは……?」 「キタジマユウマ、トモエの彼氏」 「……私、は」 「ナルセトモエ、二十六歳。僕の彼女」
/21ページ

最初のコメントを投稿しよう!

70人が本棚に入れています
本棚に追加