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「どうして、私は」
「ちょっと事件に巻き込まれてね。
記憶を失ってるんだよ。
だから療養を兼ねてここに来た」
コーヒーの沸くコポコポという音と、ベーコンの焼けるジュージューという音だけが部屋の中に響く。
「事件って……」
ぐーうぅぅっっ。
私の言葉を遮るように、派手におなかの音が鳴り響いた。
いくら、いいにおいが漂ってるからってこれはないと思う。
「おなかすいたよね。
昨日からなにも食べてないし、その前も満足に食べられてないだろうし。
ごはんにしよう」
苦笑いで男――北嶋さんに提案され。
私は火が出そうなほど熱い顔で黙って頷いた。
かりかりのベーコンにふわふわのスクランブルエッグ、それに香ばしく焼けたバケット。
さらには野菜いっぱいのスープにカフェオレという食事をとりながら北嶋さんが説明してくれたことによると。
北嶋さんの仕事は医療系の研究者で、私はその助手をしていたらしい。
二年ほど前から付き合い始め、研究が一段落した最近、結婚を考えていたという。
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