手遅れ

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「ねぇ、ギル」  鬱蒼とした森の中、孤児院に帰る道すがら、マツターケの入った篭を持ったまま、腰まで伸ばした黒髪を、振り回す様に振り返り、緑の、今は暗くて判りにくい、ギルの目を見て私は言う。 「何」  ギルは足を止め、黒い私の目を見て答える。 「沢山マツターケが採れて良かったわね」  程好く切られたギルの金髪が、今は濡れた木の皮みたいに見える、日の下なら、たわわに実った稲穂の様、そう、ギルは稲穂、私の糧。
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