第1章

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「ねぇ七美」 「ん?」 「実は……」 ゆつきは切り出しづらくて口ごもる。 「何よ?」 「あのね……」 「だから何?」 「ん~~~~」 「だから~~~何?」 「とあのお墓参りに行きたいんだけど、ダメかな?」 「ああ、そっか」 七美はいったん視線を下に外した。 「行っちゃダメ?」 「いや、ダメじゃないけど、向こうの家族に会わないようにしないと」 「やっぱりそう思う?」 「うん。もし私が向こうのご両親の立場だったら、大事な娘を殺しといて、ノコノコ出てきやがって! ってなると思う」 「だよね」 「七年たって、ゆつちゃんは世間的には許されたけど、被害者の立場で考えたら、一生許せないと思うし、七年たってある程度心の痛みが薄れてきているところに、ゆつちゃんが現れたら、また怒りがぶり返すと思うから」 「そっか……」 「自宅でご焼香なんっていうのは、絶対に無理だと思うけど、バレないようにお墓を参るなら、大丈夫なんじゃないかな」 「七美的には、ワタシがとあのお墓参りに行くのはOK?」 「それはもちろんOKだけど」 「そっか」 ゆつきはそれを聞いて、やはり行きたいと思った。
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