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歩を進める度に乾いた土がザク、と音を立てる。
見えるのは周囲に転がる大小の岩とわずかばかりの植物のみ。
まっすぐな地平線が見えるほど何もないそんな場所を、リュックサックを背負った人物はひたすら歩いていた。
この先に街があるらしいのだがそれらしきものはいっこうに見えてこない。
別に急いでいるわけではないし、まだ食糧にも余裕があるからこのまま野営をしても構わないだろう。
そんなことを考えていると、突然吹いた風が砂ぼこりを巻き上げた。
ついゴーグルの赤いレンズの下で目をつぶる。
着ている茶色のコートがバタバタと翻った。
思ったよりも強いそれに旅人の足が完全に止まる。
--それがいけなかったらしい。
ザシュッ
「……ッた!?」
左腕に痛みが走る。
反射的にそこを見やれば鋭い刃で斬りつけられたような傷ができていた。
じわり、と血が滲みだしたのを無視してすぐに視線を前にやる。
数メートル先の、風が吹くまではだれもいなかったはずの場所。
そこに、見るからに素行の悪そうな五人の男女が立っていた。
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