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「眼の前で入院するほどの怪我をしているのに?
竹田さんは、そんな人ではないでしょう。
あなたは自分自身に禍が起こるのも覚悟で、満留を紹介したんでしょう。
何故なら、呪術に頼っているあなたにとって、珠恵さんに起こったことは人事ではなかったからです」
「全て君の妄想だ、何一つ証拠が無い……」
リョータは視線を刹那から逸らし、吐き捨てるように言った。しかし、その声は尻すぼみになって消えていった。
「その通りです。でも、そんな事はどうでもいい。
あたしは、あなたにも『人を呪わば穴二つ』だってことを知って欲しかったんです」
「だから、オレはッ」
再び刹那の方に顔を向ける。
「関係ないのなら、どうして彼女は竹田さんが帰った後もここを窺っているのかしら?」
「え?」
「いい加減、かくれんぼはやめたら。あんたはとっくに『鬼』なんだから」
「大した千里眼ね、術で気配を消していたのに」
気がつくと少し離れたところに芦屋満留が腕を組んで立っていた。
「いつの間に……」
リョータが呆然とする。
実を言うと刹那は満留の存在に完全に気付いていたわけではない。
呪いが破られると、その呪いは大抵かけた術者に返って来る。
ゆえに呪いが解かれると知れば、満留が現れる可能性が高い。
と、鬼多見から教えられていたので、白檀に似た香りを嗅いだとき確信した。
もちろん、それを満留に教えてやるつもりはない。
「自分で思っているほど、あんたの『おまじない』は大したことないってだけよ」
「余りいい気にならない方が身のためよ、御堂刹那。私を怒らせると恐いから」
冷たい眼差しを刹那に向ける。それはこの言葉が本気であることを物語っていた。
「脅しのつもり?」
刹那は怒りのこもった瞳で満留を見返した。
「本当に気が強い娘ね、いずれ後悔するわよ」
「その言葉、そっくり返すわ」
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