〔十〕ブレーブスタジオ

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 大西を殺したモノが眼の前にいる、逃げ出したいがそれは出来ない。  芸能生命がかかっているのだ。今までも辛い思い、嫌な思い、苦しい思い、そして恐い思いを散々してきた。  それでも耐えて、乗り越えて来た。  今回もきっと、いや絶対に何とかする。霊感アイドルではなく、いつかトップアイドルになるんだ。  眼の前に立っている〈影〉が、例え篠原珠恵であっても、それは変わらない。  亜矢は知らないうちに〈影〉を睨み付けていた。  負けない…… 「あたしは篠原さんにも会ってきました。と言っても、彼女は病院のベットで今も意識不明のままです」  珠恵はまだ生きていたのか……  その事は考えないようにしていた。 「鳴滝さん、あなた、篠原さんが交通事故に遭った現場に居あわせたのよね?」 「え……そ、それは……はい……珠恵さんが、クルマにはねられるのを目撃しました……」  なぜそれを今聞く? 「珠恵さんが、見ていただけのわたしを怨んで祟っているんですか? あの〈影〉は彼女の生き霊?」 「いいえ」 「じゃあ、どうして……」 「あたしが言ったのは、あなたは見ていただけじゃないってコト。そうでしょ?」 「…………………!」  一瞬息が詰まった。 「ちょっと先生! いったい何の話しをしているんだッ? 私が頼んだのは除霊で、言いがかりを付けられる事じゃないぞ」  安倍が声を荒げた。 「〈影〉を取り除くために必要なんです」 「これのどこが……」 「必要です、篠原さんと直接話せない以上、(じゆ)()を行った人の心を救わなければなりません。それは、あなたもご存じでしょう?」 「な、なぜ、私が……」  安倍が口ごもった。 「今回の依頼で、あたしの行く先々に芦屋満留という芸能記者がおとずれていました。彼女につて当然ご存知ですよね、安倍新一さん」  御堂は『安倍』と苗字を不自然に強調して言った。 「……………………」  安倍が沈黙した。
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