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それとなくカガワに探りを入れたが、親からの援助、後援者や熱狂的なファンなどの情報はなかった。
そうする鍵となるのは、あのセミダブルのベッドだ。
独り暮らしのワンルームでセミダブルは必要ない、いくら広いと言っても八畳程度の部屋だ。誰かと一緒に寝るために必要だったのだ。
そうすると頻繁に亜矢と合っている人物が疑わしく、それは安部しか居なかった。それにこの男なら特技を使い、給料以上の金銭を会社から都合できる。
と、ここまでは自力で推理したのだが、呪術については素人なので、また鬼多見に頼らなければならなかった。
今度は事件の全容を伝える必要があったが、その結果、自分の予想が大方間違っていない確信が持てた。
ただ、安倍が自分を身代わりにするつもりだと気付かされた時は、恐怖よりも怒りを覚えた。
ギャラが支払われなくなる状況で、更に鬼多見を使うことに渋い顔をしていた好恵だが、刹那の生命に関わることだと知った途端、彼に代わってもらえと言い出した。
もともと最後までやり遂げるつもりだったが、意外なことに今度は早紀が好恵を説得してくれた。
「その汚い手を放しなさい」
「うるせぇな、こいつをどうしようが俺の勝手……」
言い終わる前に、早紀が安部の腕を捻り上げた。
安部が耳障りな悲鳴を上げる。
彼女はただの敏腕マネージャーではない、少林寺拳法四段のボディーガードでもあるのだ。
「貴方はマネージャーに向いていません、出所したら転職したほうがいい」
「な、何を言って……」
「所属タレントに暴力を振るったのを、ここに居る全員が目撃しています」
「あれは、アイツが……」
「あら、あたしたちが見たのは、あんたが鳴滝さんの頭をいきなりテーブルに叩き付ける姿だけよ。それはバッチリカメラにも映ってるわ、そうでしょ竹田さん?」
竹田が慌ててカメラのチェックをする。
「あ……はい、撮れてるっス! でも、どうして……」
「それを篠原珠恵も望んだから」
安部が恨めしげな眼差しで睨む。
「てめぇ、ハメやがったな!」
「自業自得でしょ」
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