〔十一〕プロダクションブレーブ

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「警察が来るまで大人しくできますね? 出来ないなら落とします」  早紀が空いているてを、スッと安部のクビに添える。  安部は口を閉じ抵抗するのを止めた。  彼の呪術では今の状況は打破できないのだ。 「さてと、それじゃ本題に入りましょうか」  亜矢が虚ろな顔を向けた。 「鳴滝さん、あたしが救わなければいけないのは、あなたじゃなくて篠原珠恵さんなの」 「どういう……こと……」 「解っているでしょ、あなたも罪を償わなければならない。だから、もう芸能界にはいられない」 「わ、わたしはただ、アイドルになりたかっただけなのッ。ただ……ただ、それだけのために(がん)()ってきた……そのためなら何だってやるッ。あなたにだって解るでしょッ!」  刹那は溜息を吐いた。 「ごめん、解らない。だからあたしは、こんな半端なことをしている」  アイドルとしては三流で、霊能者としてもやっていけない中途半端な存在、それが御堂刹那の正体だ。 「なんで……なんでアンタみたいな人が芸能界にいるのッ? わたしがどんな気持ちでエロオヤジに抱かれ続けたか、どんな思いで霊能者を演じ続けたか……どんなに……どんなに……」  亜矢はその場に泣き崩れた。 「あたしには解らないけど、篠原さんなら誰よりもその気持ちが解るでしょうね。  アイドルになりたくて上京して、やりたくもない霊感アイドルとして売り出され、そして不道徳なマネージャーに(もてあそ)ばれて、飽きられれば捨てられる」  泣き声が止んだ。 「人を呪わば穴二つ。珠恵さんを突き飛ばしたとき、あなたは自分自身も突き飛ばしていたのよ」 「そんな……わたしは……」 「いくら言い訳しても現実は変わらない、あなたが罪を償えばこの呪いも終わるわ」  亜矢がユラリと立ち上がった。 「……ばいい」 「え?」 「アンタなんか死ねばいい!」  亜矢は刹那に飛びかかり、両手で首を絞めた。  すぐさま反応しようとした早紀を、刹那は眼で制した。 「あたしを、殺して……どうするの? ここにいる……全員……殺す? それで……アイドル……続けられる……?」 「うるさい!  うるさいッ、うるさいッ、うるさいッ!  アンタが余計なことするから、アンタが余計なことするから……」
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