〔十一〕プロダクションブレーブ

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 それは今から半年ほど前の事で、ヨコハマ映像に竹田が就職したのは全くの偶然らしい。  しかし竹田はそこに運命を感じ、漠然とした疑念を抱き始めた。  大西にそれとなく探りを入れると、マネージャーの安部が和子の担当もしていたこと、そして亜矢と仕事以外でも親密であることを知ることができた。  疑念は確信に変わりつつあったが、証拠は何もない。 「そんな時っス、ある人から芦屋さんを紹介されたっス」 「紹介したのは誰です?」  竹田が一瞬視線を動かしたのを刹那は見逃さなかった。振り返らずとも、彼の視線の先にいる人物は判っている。 「すんません、それは言えないっス」 「いいえ、気にしないでください。それで、満留が何をしたんですか?」  満留は竹田の疑念が事実であると請け合った。芸能記者でもある彼女は、元々安部について取材をしていたのだという。 「芦屋さんは、オレに安部がやってきた事を詳しく教えてくれたっス。それを聞いてたらオレ、どうしてもガマンできなくなって……」  満留は竹田の怒りを煽り、復讐心に火を点けた。そして安部と亜矢を呪うことに同意させたのだ。  そして彼は呪いに使う物を満留に提供した。それは、 「オレと和子の髪と血です」  これが『()(どく)』に使われた(はこ)に入っていた物だ。これを用いて和子の霊を(そく)(ばく)し呪いの道具にしたのだ。 「もうお気付きでしょうが、この呪いは和子さん自身を苦しめます。一番憎い人間のそばに居続けなければならないんですから」 「オレもそう思うっス。芦屋さんからは、オレと和子の無念の想いを使うとしか聞いてなくて……。いや、言いわけっスね。オレは確かにこの二人に復讐する、破滅させる、殺してやるって望んだっス。  鳴滝が和子の代わりになって喜んでいる大西たち他の奴らも、同じように苦しめてやるって、望んだっス。  でも、交通事故で人が死んで恐くなったっス。オレたちの、いえ、オレのせいで鳴滝のファンが死んだ。  そんなこと……そんなこと許されないっス。オレ、そんな覚悟してなくて、本当に……本当にどうしたらいいか……」
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