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安部と亜矢は警察に連行され、刹那も事情聴取を受けた。
早紀がその敏腕ぶりをフルに発揮してくれたお陰で、刹那ばかりか竹田もすぐに解放された。
「オレ、このままでいいんっスかね……」
警察の事情聴取が終わり、事務所の廊下に出ると竹田が待っていた。
「誰かを殺したい思っても、それだけじゃ犯罪にはなりません」
廊下に警官はいないが念のため声を潜める。
「でも、オレは……」
「安部が言った通り、呪ったとしてもそれを裁く法はないんです。つまり、殺したいと思っただけと変わらないんですよ」
「そうっスけど……」
「罪の意識があるなら、もう二度と誰かを呪ったりしないで、和子さんを大事にしてあげてください。そして、大西さんや亡くなった鳴滝亜矢のファンの供養も絶対に忘れないで」
事故現場で会ったDDの霊を思い出す。
「もちろんっス……御堂さん、ありがとうございました」
刹那は竹田を建物の出口まで送った。
表に出ると覚えのある香りがした。
「まったく、とんだ茶番に巻き込まれたよ」
背後から声がして振り返ると、リョータが出てきた。彼も警察の事情聴取を終えたのだろう。
「お疲れ様です」
「言う事はそれだけか? オレだってヒマじゃないんだ」
いら立たしげに声を荒げる。
「いいえ、あたしからも確認したいことがあります。竹田さんに芦屋満留を紹介したのは、リョータさんですね」
一瞬、リョータの表情が固まったが、すぐに平静を取り戻した。
「人をこんな茶番に付き合わせて、今度は言いがかりをつけるのか?」
「満留を紹介した人物を聞いたとき、竹田さんは一瞬あなたがいる方を見ました」
「ふざけるなッ、たったそれだけで、何でオレが霊能者を紹介した証拠になるんだよッ?」
「もちろん、それだけじゃありません。竹田さんは交通事故に遭ったファン、大西さんのこ事あれほど気にしていたのに、あなたについては一言も口にしませんでした」
「それはオレが死んでないからか、でなけりゃ竹田がオレを嫌っているからだろ?」
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