甘口

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自炊が理想。 でも現実は少し違う。 便利な世の中に助けられ、お手軽に済ませてしまう事もある。 一緒に食べる人がいれば頑張るけれど、独り身だとついつい手を抜いてしまう。 残業続きでクタクタ。そんな時くらいラクしてもいいでしょ。 「しまった、甘口だ。」 温め終わり、パウチ開封直前に気付いたけれど、ここまできたら食べるしかない。 「えぇっ!?」 何が起こったの? 目の前のこれは現実? 意味がわからない! 「大丈夫?」 開いた口が塞がらず、手元の袋と突然現れた美男子を交互に見る。 「カレー……カレーは?私の晩御飯は…?」 お皿に盛られたごはんは真っ白なまま。 袋には大きく書かれた『甘口』の文字。 隣には愛らしく微笑むカワイイ系男子。 確かに。 確かに、甘口だ。 「って、違う!」 「違わないよ?ほら、ココ。」 そう言って、空箱のロゴを指差す。   『レトルト カレ(甘口)』 「カレ?カレーじゃなくて、カレ?」 「そうだよ。」 よくできましたと頭を撫でる手は大きくて温かい。 空腹は満たされないけど、空っぽの心が満たされていく。 無条件で甘やかしてくれるレトルトなカレは、間違いなく甘口だ。 ぐぅ~ 心は満たされても、お腹は満たされない。 食事を待ち望んでるお腹の虫だって抗議するさ。
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