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「俺の和泉、また勝手に力を使ったね?」
冴え冴えと月影が落ちる中、彼は闇からにじみ出て来たかのように姿を現した。
「……わたくしは、貴方のものではないし、この力もわたくしのものよ。
なぜ貴方に一々断りが必要なのかしら?」
手にしていた筆を筆置きに戻して、私は彼に向き合うように体勢を変えた。
広い局に二人きり。
声を上げてもきっと、誰の元にも届かない。
周囲の局の女房達は、彼の術で泥のように眠っていることだろう。
そう、彼は。
決して、自分がここを訪れていると周囲に覚られるような真似はしない。
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