半天(なかぞら)にひとり有明の月を見て

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「和泉のその力は、人の身には過ぎるものだ。  和泉は俺と違って、ただの人間なんだよ?」  彼は踊るような足取りでわたくしの方へ近づいてくる。  フワリフワリと進む足は、コトリとさえ音を立てない。 「過ぎた力は、命という器を削る」  現実味を感じさせない足取りで、でも確かな存在感をまとって、彼はわたくしの目の前に立った。 「だからその力は使わないでって、ずっとお願いしてるじゃないか」  フワリ、と彼が片膝をつき、紙よりも白い指が慣れた動きでわたくしの顎をすくう。  フッと視界が陰ったと気付いた時には、口づけを落とされていた。  慣らされてしまったその感触を、わたくしは無条件で受け入れる。 「ねぇ、俺の和泉。  俺がこうしなかったら、和泉はとうの昔に力に負けて死んでいたんだよ?  和泉の母上と同じように」
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