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「和泉のその力は、人の身には過ぎるものだ。
和泉は俺と違って、ただの人間なんだよ?」
彼は踊るような足取りでわたくしの方へ近づいてくる。
フワリフワリと進む足は、コトリとさえ音を立てない。
「過ぎた力は、命という器を削る」
現実味を感じさせない足取りで、でも確かな存在感をまとって、彼はわたくしの目の前に立った。
「だからその力は使わないでって、ずっとお願いしてるじゃないか」
フワリ、と彼が片膝をつき、紙よりも白い指が慣れた動きでわたくしの顎をすくう。
フッと視界が陰ったと気付いた時には、口づけを落とされていた。
慣らされてしまったその感触を、わたくしは無条件で受け入れる。
「ねぇ、俺の和泉。
俺がこうしなかったら、和泉はとうの昔に力に負けて死んでいたんだよ?
和泉の母上と同じように」
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