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「ありがとう。そこでだ。今日、俺の部屋に彼女が来る。さすがに、このチョコの量はまずい。
彼女は大事な女なんだ。チョコレートなんかで気まずくなりたくなんかない。
本気なんだよ。俺は、この恋だけは失いたくない。だから、これ、全部お前が引き取ってくれないか?」
俺は、和也の言葉を信じられない面持ちで聞いていた。
こいつとは高校生の頃からの腐れ縁で、大学も会社も一緒。
しかし、和也と俺は正反対、和也はイケメンでフットワークが軽く、女子から凄くモテた。
俺はと言えば、根暗ではっきり言って不細工。しかし、正反対の性格だからこそ、お互いなんとなく馬が合った。
そして、和也と連るんでいると、それなりに可愛い子との出会いはあった。まあでも、俺はただの良い人で終わる。
和也はその子と付き合う。これがお決まりのパターン。それでも、和也と一緒に居れば、合コンにはバンバン誘われるので、俺に少しはメリットがあるかに思われた。だが、よく考えると、俺はたぶんあいつの引き立て役でしかないのだろう。
そんな和也は女に関しては、そこそこにクズだった。
和也はクリスマス前には女と別れる。なぜかと聞いたことがある。
「だってさあ、クリスマスには、どこか連れてけだとか、プレゼントしなくちゃならないだろう?
そういうの面倒だし、勿体無いじゃん?どうして、男だけにそんな義務が課されるのかね?」
そう言って笑うのだ。クズだと思った。大勢の女の子がこいつに毎年振られるのだ。
酷い時には1週間と持たなかったこともあった。束縛されて面倒、理由はそれだけだった。
たった1週間で束縛もクソもないだろう。二股三股は当たり前。バレてもしれっと別れる?と言って女を泣かせた。
こいつ絶対に良い死に方しない。そう思った。
そんな和也が、去年のクリスマスは俺と過ごさなかった。たいてい、クリスマスにはボッチの俺と連るんで遊んでいたのだが。彼女と過ごしたと聞いて驚いていた。これは本気なのだ。
しかし、世の中不公平だ。あんなに女を泣かせても、いざ本気になればあいつは結婚できる。
俺は早くに両親を亡くしていたから、家庭に対して憧れがあるし、結婚願望も強い。なのに、彼女すら居ない。
ぼんやりとテレビを見ていたら、いつの間にか日付があと少しで変わる。
今年は、うるう年か。
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