うるう人

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俺はテーブルの上の「カズくんLOVE」のチョコレートをバリンとかじりながら呟いた。 「はあ~、女の子でも降ってこねえかなあ。」 「はい?」 そう言うと、天井から女の子が降ってきた。 「わああああああ!」 俺は驚いてビールを倒してしまい、ローテーブルに川を作ってしまった。 「でっ、でででででっ、出たぁ!」 幽霊だと思った。だが、女の子はキョトンとしている。おそらく十六、七くらいだろう。 幽霊にしては、血色が良いし、ごく普通の女の子にしか見えない。 ただし、壁に立っていること以外は。 重力に逆らっている。やはり、人ならざるものか。 「あなたは、うるう人に選ばれました。」 女の子は微笑むとそう言った。なんだこれ。新手の詐欺か? でも、やはりこれは人間ではない。重力の軸がおかしいのだ。 「お、お前、何者だ!」 俺は震える声で、指差した。 「私は、解き人です。あなたを解きに参りました。」 「ホドキビト?意味がわからねえ。とにかく出ていってくれよ!」 「女の子、降ってこねえかな、って言ったくせに。」 そう言って、口を尖らせた。かわいい。いやいや、でもこれは不法侵入だぞ。 「警察呼ぶぞ?」 「いいですよ?ただし、貴方が捕まるだけですけど。」 「ははん、俺にさらわれたって言うつもりだな?」 「違うますぅ。警察さんには私が見えないんですぅ。」 「なんだって?」 「だからあ、言ったじゃないですかあ。あなたがうるう人に選ばれたって。 選ばれた人にしか、私は見えないんですってば。」 「そんなバカな。騙されないぞ?」 「じゃあこれでは?」 そう言うと、女の子は今度は天井に立った。 ぶら下がったというのではなく、立った。髪の毛は重力に逆らって、こちらには垂れ下がってないのだ。 まるで重力が上に働いているかのように、彼女は天井に立つ。俺は唖然とした。 「お、オバケ?」 「ブッブゥー。それも違いますぅ。んー、なんて言ったらいいんだろ。私は次元の狭間人なんで。」 その子はペロっと舌を出した。またまたかわいい。いかんいかん、この子は人ではないのだ。 「ジゲンノハザマビト?」 「うん。実はね、にわかに信じがたいって思うんだけど、他の次元に居る貴方が死んでしまうんですよ。」 「他の次元?」 頭がおかしくなりそうだ。俺は人ならざるものと会話している。
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