うるう人

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「えーっと、今では三次元までが確認されている次元だけど、こちらでは四次元は空想の世界でしかない。 ところが、次元って九次元まであるんですよ。座標軸で現したら、わかりやすいと思うんだけど。」 「つまり、どういうこと?」 「別の次元、つまり平行世界があるってことですよぅ。それでね、あちらの世界のあなたが、この若さで死んでしまうんです。そこで、あなたにあちらに転生してもらえないだろうかと、あちらのあなたからの立っての願いで、うるう年にだけ叶う、うるう人にあなたが選ばれたってわけですよ。」 「勝手にそんなこと決められても困るよ。俺にだってこちらの生活があるし。」 「こちらに?何か大事な人でも?」 「ぐぅっ。居ない。で、でも、仕事が・・・。」 「あ、それでしたら、心配いりませんよ。あちらでも、あなたは同じ会社で同じ環境ですから。 ご友人も同じ人ですから、寂しいことなんてありませんよ。」 「で、でも・・・。そんなこと。信じられるかよ。ハイそうですかって行くわけねえだろ。」 その女の子は右の眉をくいっと上げ、こちらを値踏みするように見た。小悪魔の顔だ。 「あなたが、あちらで新婚さんでもですか?」 「えっ、あちらの俺は結婚してるのか?」 「ええ。結婚して、幸せに暮らしています。でも、悲しいかな、あちらのあなたの寿命は今日までです。」 「そ、そうなのか?」 「ええ。それをあちらのあなたに告げると、新婚なので何とかならないのかと泣きつかれました。寿命なので仕方ありません。だから、私があなたの前に現れたのですと告げました。せめてかわいい奥様を悲しませたくないと言われるので、うるう人を希望するか聞いたのです。そうしたら、ぜひと言うことで。お迎えにあがりましたw。」 「お迎えにあがりました、って、俺の意思は無視かよ。」 「でも、あなた、結婚したいんでしょう?幸せになりたいんですよね?」 「ま、まあな。」 「それじゃあ、何が不服なんですか?こちらと全く同じ環境なんですよぉ?ただ違うのは結婚しているっていうだけで。」 そうだな。これは、俺にとって願ったり叶ったりではないか?それに、これは、夢かもしれないし。 夢ならさめるし、現実だとしても、俺は幸せになれる。かわいい奥さんと暮らす。夢のようではないか。
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