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「痛かったりするのか?」
俺は不安を口にした。すると、女の子は首を横に振った。
「ううん、ぜんぜん。あなたを解くだけですから。この世界から解いて、織姫さまに紡いでもらうんですよ。」
「オリヒメ様?」
また新しい言葉が出てきた。
「私は解くだけの人でー、紡ぐ人はまた別の人。」
織物かよ。でも、結婚したい。俺だって幸せになりたい。
「わかった。」
俺はそう呟いた。本当にこれでいいのだろうか。
「そう来なくっちゃ。では、早速!」
そう言うと、女の子は微笑み、どこから出してきたのか、魔法少女のようなステッキをくるくると回しだした。
すると、俺の体が、頭からしゅるしゅると糸のように解けていった。
もう声を出すこともできなかった。解ける、解ける、俺の体が一本の糸になって空を駆けた。
真っ暗な闇。
その遥向こうに、ぼうっと光がともった。
だんだんと糸になって俺の体はそちらに流れてゆく。
そこには、はっとするような美しい巫女装束の少女が機織り機の前に座っていた。
俺の糸を手繰り寄せると、無表情でかたんかたん、トントンと糸を紡いで行った。
俺が編まれて行く。かたんかたん、トントン。かたんかたん、トントン。
しばらくすると、平面の俺が織りあがった。一枚の二次元でしかない俺に、織姫と呼ばれた少女が、ふうっと息を吹き掛けた。バラのように甘い吐息だ。
何と心地よい。俺は、そのままフワフワと漂い、深い眠りについたのだ。
心地よい朝の目覚めを迎えた。
温かい清潔な布団の中。やはりあれは夢だったのか。
俺は苦笑した。
俺の鼻腔を懐かしい匂いがくすぐる。これは、お味噌汁の匂いではないか?
台所の方から匂いがする。
俺が半身を起こすと、鈴を転がすような、女の美しい声がした。
「あら、あなた、起きてたの?」
台所からパタパタとスリッパの音がする。
マジ?俺、本当に異次元に転生しちゃったの?まさかw
女の足元から、徐々に上に視線を移す。
「うわあ!」
俺は、つい叫んでしまった。
「な、何よ。びっくりした。へんな夢でも見たの?」
その女はカエルのような顔をした女だった。
目は、あらぬところについている。本来人間の目というのは、正面を向いているのだが、この女の目はほぼこめかみのあたりについていて、鼻は低くつぶれていて穴だけ、口は耳元まで裂けている。
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