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そして、恐怖の瞬間が訪れる。
「ねえん、あなたぁん。」
薄いネグリジェに身を包んだ、カエル嫁が俺の布団にもぐりこんできた。
カンベンしてくれ。お前とは、無理!
俺を元の世界に返してくれ!返して!返してくれよ!
俺が叫ぶと、また女の子が降ってきた。
「呼んだ?」
女の子はあらぬ方向に重力を無視して立っていた。
「た、助けて!俺、こっちの世界では無理!この女と一生暮らすの無理!」
俺が叫ぶと、後ろでカエル女が抗議していた。もうそんなことはどうでも良い。
「助けて!俺を元の世界に返して!」
「わがままだなあ。もう。」
そう言って、解き人の少女は頬を膨らませた。
「お前、俺を騙したじゃないか。かわいい奥さんって。どこがかわいいんだ。」
そう言うと、カエル女は癇癪を起こし、とうとう泣き出してしまった。
「ひっどーい。こちらの世界では、かわいい奥さんだもの。間違いないでしょ?」
「そんなのは詭弁だ。とにかく。元の世界に返せ!」
「わかったわよ。でも、一度解いて、紡いだ体は、元の姿には戻らないけどいい?」
「別人になったってかまわない。とにかく、こっちで暮らすのは俺は無理!」
「わかりました。じゃあ、いっくよぉ~?」
そう言うとまた少女は、魔法の杖のようなステッキを振り回した。
すると、俺の体が、またするすると解けて行った。
そして、また遠くにぼんやりと織姫の機織り機が見えてきた。
俺の糸が紡がれていく。
ああ、これで元の世界に戻れる。良かった。良かった。
俺の体は紡がれて、また温かいバラの吐息をかけられた。
俺の意識は遠くに飛ばされた。
深く深く、眠りについた。
目覚めると、うっすらと太陽の光を感じた。
温かい。俺の布団のにおいがした。
やった。俺は、元の世界に戻れたんだ。
んん?何だか、布団が重いぞ?
俺は必死で布団と思われるものを跳ね除けて、起き上がった。
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