Changin' my life

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 この高校に入学して良かったと思うのに時間はかからなかった。初めは知らない人ばかりに囲まれ中学からの友と古巣を懐かしんだりもしたが、教壇で挨拶をする担任を見て(この人は面白いな)と直感的に察した。 「女子高生が好きなので一番なりやすい社会科の先生になりました」  僕の耳には「自分は教師になってはいけない人間です」と聞こえたし、それは他のクラスメイトも同じだったようで先生が“教員免許を持った反面教師”という異名を手にするのには十分だった。淫行に及ぶ教師は少なくないがこういった命取りになりかねない発言をする教師は他の学校では見られないだろう。まだ27歳と若い担任は“若い”で済ませるにはあまりにも学生気分の抜けない男で、およそ教師という立場では憚られるであろう発言も躊躇なくする姿勢は裏表を感じさせず、不思議なことに生徒からの信頼を得ていた。 「黒川、あの担任やばくないか」 と隣の席に座る色黒の男が話しかけてきた。 「あぁ、おそらくだが俺たちの卒業まであの先生が在籍していることはないだろう」  クラスではしばらくの間担任である黛先生の話題で持ち切りになった。根も葉もない噂だろうが、未成年の少女と歩いているところ見た、などの情報が流布し援助交際の疑惑までかけられていた。当の本人はどこか吹く風であり気にしていないように見えた。  先生は女子高生が好きなのは勿論だがどうやら他人にものを教えるという優越感も教師になった動機のようで、生徒のくだらない質問であっても丁寧に答えてくれることが多かった。先生曰く「下手な坊さんの説教よりタメになる」という語りは意外にも人気であった。
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