Changin' my life

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 5月の下旬、梅雨ももう終わろうとしているのに先生は、正月気分が抜けない、と嘆いていたがその口臭から察するに抜けていないのは酒のようで誰かが大声を出そうものなら眉間にシワを寄せた。  教卓でうなだれる二日酔いの男に近寄るものはおらず、いい機会だと先生に質問してみた。 「先生、お金より大切なものとはなんでしょう」 「そんなものはない」  普通は命だとか言うものではないだろうか。 「いいか、命=寿命=時間とするだろ。時間を遣ってお金を稼いでるわけだから、お金=命ということになる。お金がないとメシは食えないし、そもそもメシを食うということも他の命を頂いているわけだからな」 「確かに『時は金なり』だとか『時間の遣い方は命の遣い方』といった命=時間=お金って図式は昔から言われてますね。でも命ありきな気も……。生きていないとお金は遣えないですし」 「それ、遣うお金もなく稼ぐこともできない状況であれば『金がある人生じゃなきゃ意味がない。金ありきだ』と言わないか?」  一理あるなぁ、と言うと「百理あるわ!」とケラケラ笑った。  先生は死んだ魚のような目をしており一見クールに見えるが相当なゲラであり「階段の匂いを嗅いだんだ」や「コカイン飲んでチンコかいーん」などの駄洒落を自分で言っては笑っている。
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