口説く彼に、困惑する彼

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 最後のデザートは乃木の分までしっかりと頂いた。 「美味しかったです。ご馳走様でした」 「喜んで貰えてよかったよ」 「奢ってもらってばかりで悪いです」 「なんで? デートに誘ったのは俺だし。だから気にすることないよ」 「ですが」 「じゃぁ、お礼に……」  そういうと音をたて唇にキスをする。 「どさくさに紛れて、とんでもねぇですね」  唇を手の甲で拭うと、乃木の顔が苦笑いを浮かべる。 「なんかショックだな」 「普通に男とキスなんてありえねぇでしょうが」 「俺は君とならしたいよ」 「はぁ。しょうがねぇですね」  乃木の唇へと唇を押し付ける。 「百武君」 「お礼ですよ。じゃぁ、失礼しま……、なっ」  ぐいと肩を掴まれて、再び唇が触れる。そのまま舌を差し入れ歯列をなぞる。 「ん、んんッ、……はぁ」  散々、貪られて甘く痺れを残し唇が離れる。百武は頬を高揚させて上がった息を整えた。  濡れた唇を舐める姿は扇情的で。キスの余韻もあったか、ドキッと胸が高鳴る。 「やっぱ、男とキスなんてありえねぇです」 「そんな可愛い顔して言われてもねぇ」  頬を撫でられ、真っ直ぐに見つめられる。 「離してください」  乃木の手が触れている箇所が熱くてしかたがない。 「好きだ」  顔が近づき、今一度、唇が触れそうになり。  だが、その唇は重なり合うことは無く。百武がキスを拒むように手を差し込んだ。 「調子にのらねぇで下さい。お礼はもうしました」 「残念」 「……話、楽しみにしてますんで。では、失礼いたします」  はやくこの場から逃げ出した。  今は乃木の顔をまともに見ることができないから。 「またね、百武君」  引き止められることなく、すんなりと帰してもらえた。 「はぁ、油断ならねぇ」  胸が激しく波打つ。  はやくこの高鳴る鼓動を鎮めないといけない。でないと、乃木を担当の先生として見れなくなりそうだ。
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