彼は彼の愛を知る

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※ ※ ※  恋人同士になったからと甘い想いを持っていたら、仕事だと割り切り、何時もの通りつれない態度。  ちょっかいをかけるものなら凄まれてしまう。 「百武君、顔が怖いよ」 「顔が怖いよ、じゃねぇでしょうが。乃木先生が真面目に仕事をしないからです」  今日は読み切りの打ち合わせなのだが、うわの空の乃木に百武の叱咤が飛んでいる最中というわけだ。 「だって、部屋で打ち合わせしたいって言ったのに」  そっと手に指を這わせれば、それを払われてしまう。 「二人きりだと真面目にやらねぇでしょうが」  確かに、二人きりになったら百武に何をしてしまうかわからない。 「俺をガッカリさせねぇでくれませんかね?」  いつでも別れますよと耳元で囁かれる。 「え、それは絶対に嫌だ」 「なら、ちゃんと仕事をしてくれますよね」  と、ニィと口角を上げる。  たまらない表情。痺れるくらいに怖い。  本人には決して言えないが、小さな子供やか弱き女性の前では絶対にしない方が良いと思う。 「二人とも、珈琲をどうぞ」  珈琲とカフェモカが置かれる。 「ありがとうございます、江藤さん」  仕事の打ち合わせでも百武は珈琲を口にするようになった。  自分に心を許してくれている、そう思うとニヤニヤとしてしまう。  甘いカフェモカに口元を緩ませ、表情が和らぐ。  可愛い甘党の恋人を眺めつつ、ブラック珈琲を口元に運んだ。 【求愛される甘党の彼・了】
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