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恋人同士になったからと甘い想いを持っていたら、仕事だと割り切り、何時もの通りつれない態度。
ちょっかいをかけるものなら凄まれてしまう。
「百武君、顔が怖いよ」
「顔が怖いよ、じゃねぇでしょうが。乃木先生が真面目に仕事をしないからです」
今日は読み切りの打ち合わせなのだが、うわの空の乃木に百武の叱咤が飛んでいる最中というわけだ。
「だって、部屋で打ち合わせしたいって言ったのに」
そっと手に指を這わせれば、それを払われてしまう。
「二人きりだと真面目にやらねぇでしょうが」
確かに、二人きりになったら百武に何をしてしまうかわからない。
「俺をガッカリさせねぇでくれませんかね?」
いつでも別れますよと耳元で囁かれる。
「え、それは絶対に嫌だ」
「なら、ちゃんと仕事をしてくれますよね」
と、ニィと口角を上げる。
たまらない表情。痺れるくらいに怖い。
本人には決して言えないが、小さな子供やか弱き女性の前では絶対にしない方が良いと思う。
「二人とも、珈琲をどうぞ」
珈琲とカフェモカが置かれる。
「ありがとうございます、江藤さん」
仕事の打ち合わせでも百武は珈琲を口にするようになった。
自分に心を許してくれている、そう思うとニヤニヤとしてしまう。
甘いカフェモカに口元を緩ませ、表情が和らぐ。
可愛い甘党の恋人を眺めつつ、ブラック珈琲を口元に運んだ。
【求愛される甘党の彼・了】
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