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……ラーラララーラララララララー。
歌が聞こえる。
歌詞のない、メロディだけの鼻歌のような歌が。
遠く……本当に遠くから聞こえているようなその歌が、確かに私の耳に届いている。
「マ……マ……」
眠っているけど、そう言った事だけはやけにはっきりと覚えていて、その声の発生源を探すように、私は手を伸ばした。
ラーラララーラララララララー。
間違いない、これはママの声だ。
私を寝かしつける時に、いつも歌ってくれていた歌。
そう思った瞬間、ママが帰って来てるはずだと目を開けた。
薄暗い部屋。
窓から差し込む月明かりで、辛うじて部屋の中が見える。
「ママ……帰って来てるの?」
まだ眠い目を擦りながら、ベッドから脚を下ろしてサンダルを履く。
夢の中とはいえ、ママのあの歌を聞いて、いてもたってもいられなくなってしまったから。
そして、ドアノブを握り、ゆっくりと回そうとしたけど……。
なぜか、ドアノブは回らなかった。
鍵がかかっているわけでもないのに……どうして?
だけど、怖くなって手を離したと同時に、ドアノブはゆっくりと回り始めたのだ。
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