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そんな事をぼんやり考えて、気にせず眠ろうとしたけど……なぜか、その音は私の意識に強引に割り込んできて、いつもよりも鮮明に聞こえたのだ。
ギシッ……。
ギシッ……。
何これ……音が、美紀ちゃんの部屋の方からこっちに向かっているのが、手に取るようにわかる。
壁を這って、私を怖がらせようとしているのが。
ママが与えてくれた温かい気分は、一転冷たい物へと変わり、部屋の空気すら蝕んでいるような感覚に包まれた。
「う……ん……」
声を出そうとしても、身体は眠ってしまっているのか、音が漏れるだけ。
意識だけが眠りを妨げられて、自由に身体を動かせない。
そんな私に、音は容赦なく迫る。
ギシッ……。
ギシッ……。
カチャッ。
ドアに手を掛けた音。
遠慮もなくドアノブが回され、ゆっくりとドアが開かれて行くのが感覚としてわかった。
身体がそれを見るのを拒否しているかのように、まぶたが重くて目を開けられない。
音が……部屋の中に入って来た。
ペタペタと、壁を伝ってやってくるそれが、私のところに来る前にと、必死に目を開けようと力を入れて。
重かったまぶたが……やっと開いた。
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