穢れ

3/63
5733人が本棚に入れています
本棚に追加
/475ページ
そんな事をぼんやり考えて、気にせず眠ろうとしたけど……なぜか、その音は私の意識に強引に割り込んできて、いつもよりも鮮明に聞こえたのだ。 ギシッ……。 ギシッ……。 何これ……音が、美紀ちゃんの部屋の方からこっちに向かっているのが、手に取るようにわかる。 壁を這って、私を怖がらせようとしているのが。 ママが与えてくれた温かい気分は、一転冷たい物へと変わり、部屋の空気すら蝕んでいるような感覚に包まれた。 「う……ん……」 声を出そうとしても、身体は眠ってしまっているのか、音が漏れるだけ。 意識だけが眠りを妨げられて、自由に身体を動かせない。 そんな私に、音は容赦なく迫る。 ギシッ……。 ギシッ……。 カチャッ。 ドアに手を掛けた音。 遠慮もなくドアノブが回され、ゆっくりとドアが開かれて行くのが感覚としてわかった。 身体がそれを見るのを拒否しているかのように、まぶたが重くて目を開けられない。 音が……部屋の中に入って来た。 ペタペタと、壁を伝ってやってくるそれが、私のところに来る前にと、必死に目を開けようと力を入れて。 重かったまぶたが……やっと開いた。
/475ページ

最初のコメントを投稿しよう!