小野山美子

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昭和39年9月20日。 「ほら、美紀ちゃん、美子ちゃん、あそこに幽霊花が咲いてる。綺麗ね」 近くの川原で、双子の姉、美紀ちゃんと遊んだ帰り道、おばあちゃんに手を引かれて土手を歩いている時のことだった。 私は怖がりで、「幽霊」と聞いただけで身体が震えてしまうのに、そんな事を言うもんだから、少し怯えてその花を見た。 「赤くて綺麗ね。ねえおばあちゃん。どうして綺麗なのに『幽霊花』なんていうの?」 それなのに、美紀ちゃんはいたずらっぽく笑って、そんなことを尋ねる。 私が怖がるのを楽しんでいるかのように。 「美紀ちゃん!そんなことどうでも良いでしょ!早く帰ろうよ。今日の晩ご飯は何かな」 だから私も話題をそらす。 そんな私に気付いてくれたのか、おばあちゃんもクスクスと笑って、幽霊花の話はそれ以上はしなかった。 ひんやりと冷たいけど、柔らかいおばあちゃんの手が、私の手を包んでいる。 「そうね、美紀ちゃんには後で教えてあげるからね」 「約束よ、おばあちゃん」 なんとかこの場で、幽霊の話をされるのは切り抜けたけど……美紀ちゃんは意地悪なんだから。 赤く染まった夕焼けの中、私達は三人で家に向かって歩いた。
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