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「……」
そんな中、美紀ちゃんがお箸をテーブルに置き、椅子から降りてダイニングルームから出て行こうと歩き始めた。
それを見て、また来ると慌てて耳を塞いだ瞬間、おじいちゃんの怒鳴り声が部屋に響き渡る。
「こら!美紀!ごちそうさまを言いなさい!何度言わせればわかるんだ!」
突然の怒号に、おばあちゃんも和子おばちゃんも驚き、身体がビクッと震えた。
それなのに美紀ちゃんは、素知らぬ顔でドアを開けて、ニヤリと不気味な笑みを浮かべて出て行った。
「まったく……美子と比べて、美紀のあの態度はなんだ。昔はあんなじゃなかったのに」
眉間にしわを寄せ、ため息混じりに首を横に振るおじいちゃん。
いつからだろう。
美紀ちゃんがあんなふうになったのは。
以前は、私よりも明るくて、皆に好かれていたのに。
小学一年生の時に、この家に引っ越して来て、しばらくしてから、時々あんなふうになってしまう。
一体何があったのか、私にはわからないけど。
「あ、そうそう!夕方に若奥様からお電話があって、今日の夜中にお帰りになるそうですよ!」
この重い空気を変えようとしたのか、和子おばちゃんが思い出したかのようにそう言い、私は笑顔になった。
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