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「ラーラララーラララララララー……美子ちゃんから出て行って。黒くて怖い人は……いらない!」
強く、美紀ちゃんがそう言うと、私の身体から黒いモヤが飛び出した。
完全には出なかったようだけど、三男の支配からは逃れる事が出来たみたいだ。
「アアアアアアアアア……」
それでも、闇に染まった私の心は元には戻らなくて、化け物になった私は、唸る事しか出来なかった。
「美子ちゃん……お姉ちゃんがずっと一緒にいてあげるからね。でも、この家はダメみたい。黒くて怖ーい人がいるから、外に行こ」
美紀ちゃんがそう言って伸ばした手を、私は掴んだ。
「パパ、ママ。美子ちゃんは美紀ちゃんがしっかり面倒を見てあげるから心配しないでね。だって……お姉ちゃんなんだもん」
泣き叫ぶパパとママの横を通り抜けて、美紀ちゃんと二人で階段を下りる。
私は……これからどうなるのだろう。
三男の支配から解き放ってくれたのは、殺したはずの美紀ちゃんで。
今の私は、結局は美紀ちゃんに支配されているだけにすぎない。
自我が心の深い所に追いやられて、出ることも叶わなくて。
美紀ちゃんの言う通りに動くだけの、ただの化け物。
人を殺す、悪霊になってしまったんだ。
パパが気に入っていたという階段。
それを下りて、私と美紀ちゃんは玄関のドアを開け、外に出て行った。
もう……この家に戻る事はないだろうと感じながら。
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