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「ふぅ……この現場ともおさらばだな。金になったし、何よりあいつが死んでくれたのが良かったよなあ」
へへへっと、肩を震わせて笑い、おかしな事を呟き始める。
誰も聞いていないと思っているのだろうけど、私はその男の人の後頭部をずっと見詰めていた。
「それにしても……あの子は良かったなあ。思い出すだけで興奮するぜ。殺しちまったのがもったいなかったけど、全部あいつが被ってくれたからな。死人に口なし……ってか」
笑いながらタバコをくわえた男の横顔を……私は思い出した。
タイちゃんが首を吊っていた雑木林の方を向いてニヤニヤする男。
私を殺した、タイちゃんの弟だ。
「アアアア……アアアアアアアアアアアアアアアアアアアッ!!」
「何?どうしたの美子ちゃん。……そう、怒ってるんだね。この人が、美子ちゃんを殺したんだね」
何も言えなくても、美紀ちゃんは私が考えている事がわかるようだ。
「おおっ!?なんか急に寒くなってきやがったな。早く家に帰って、酒でも飲んで寝るか」
身体をブルッと震わせて、慌てて立ち上がった弟、雄蔵。
タバコを足元に落とし、踏み付けて火を消して振り返った。
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