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その瞬間、雄蔵の顔が恐怖に引きつる。
さっきまで見えていなかったのに……明らかに私を見て、怯えていたのだ。
「う、うわああああっ!!お、お前は小野山の……く、くそっ!化けて出やがったか!」
転がり落ちそうになりながら、後ろ向きに土手を滑るようにして下りて、震えながら雄蔵が叫ぶ。
「アハハッ、おじさん……怖いの?おじさんが殺した美子ちゃんだよ?」
その様子を見て、美紀ちゃんが笑う。
「ふ、ふざけんなっ!大人しく成仏しやがれ!」
雄蔵が、そう吐き捨てて、学校の方に逃げようと振り返った時。
私の中にあった、黒いアレに背後に立たれた時の恐怖が思い出されて……引き寄せられるようにして、雄蔵の前に移動していた。
逃げられるくらいなら……。
「ねえ……赤いのちょうだい」
「ひっ!」
小さなその悲鳴が、私の耳に届くより早く……突き出した手が、雄蔵の胸を貫いた。
掴んだ心臓が、背中から飛び出した手にしっかりと握られて。
「美子ちゃん!ここを汚さないで。ここは私達の遊び場なんだから!」
美紀ちゃんのその言葉に従うように、私は雄蔵の身体を土手の向こうへと放り投げた。
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