小野山美子

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ダイニングルームを出ると、そこはエントランスホール。 玄関のドアの正面に、二階に続く階段と、お風呂場やおじいちゃん達の寝室に続く廊下がある。 左右にも廊下があって、ダイニングルームの反対側の廊下が私は嫌いだ。 なんだか寒いというか……暗くて夜は怖いから。 廊下に出ると、嫌でも目に入るその場所に、何かがいるんじゃないかと思ってしまう。 「何もいない、何もいない。美子ちゃんはもう11歳なんだから。怖くないんだからね」 なんて、自分に言い聞かせながら、チラリとその場所を見ると……。 「えっ?」 何かが……動いているように見える。 黒く、モヤのような何かが、廊下の奥からこちらに向かって。 「ひっ!」 美味しい料理で温まった身体に、一瞬にして冷たい物が駆け巡る感覚に包まれた。 脚が……動かない。 怖くて逃げ出したいのに、悲鳴を上げたいのに、声も出ない。 どうすれば良いかわからず、ダイニングルームのドアノブに手を伸ばそうとしたその時だった。 「……美子ちゃん、そんな所に立って何をしているの?」 その声で、私は夢から覚めたかのように我に返り、大きく息を吸った。
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