壊れゆく日常

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口だけパクパクと動いているだけで、もがいても美紀ちゃんはピクリとも動かない。 私と同じ体重なのに……岩が乗っているかのように重くて。 いや、そうじゃない。 金縛りにかかっているように、私の身体が動かないんだ。 「美子ちゃんは邪魔なの。だから死んで?美子ちゃんがいなくなったら……美紀ちゃんが自由になれるから」 そう言い終わると、かざした手をゆっくりと上げて行く。 と、同時に感じる激しい痛み。 胸に……内側から裂けているかのような痛みが走る。 「あ……あ……い、痛い!痛いよ美紀ちゃ……」 どんなに叫んでも、美紀ちゃんの手は止まらない。 骨が軋む。 胸の骨が、内側から開かれるような奇妙な感覚。 メリメリと音を立て、骨が、肉が、弾かれるように裂けた。 身体の中から引っ張られている感覚の先には、ドクンドクンと動く心臓。 どうして私を……なんでこんな事に。 痛くて辛くて苦しくて、声も出せずに、涙を流す事しか出来なかった。 「ラーラララーラララララララー……」 美紀ちゃんが子守唄を歌い、ニヤリと笑った後に手を握り締めた。 その瞬間、私の目の前で心臓が弾け飛び、辺りに血が飛び散ったのか……私が見た最期の光景だった。
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