5747人が本棚に入れています
本棚に追加
ミシッ……。
ミシッ……。
まただ。
この軋むような音は、いつからか毎晩聞こえるようになった。
廊下を歩いている音じゃない。
壁から聞こえるその音に、私は何も出来なくて、ただ怯えるだけ。
毎日聞こえる音だけど、私自身に何かが起こったとか、そういうのはないから。
「大丈夫……ジッとしていれば何も起こらないから。隣の部屋には美紀ちゃんもいるんだから」
目を閉じて、両手で耳を塞いで。
この部屋の外側を動いているかのような音にただただ怯えて、時間が過ぎるのを待った。
そして、どれくらいの時間が流れただろう。
ほんの数分のおかしな音、それをやり過ごせたかと思い、そっと耳から手を離した。
おかしな音は聞こえない。
良かった、もう音が消えたんだと、ホッとため息をついて、振り返ると。
「美子ちゃん、何してるの?」
私を覗き込むように、近付けていた美紀ちゃんの顔が、そこにあったのだ。
「ひやっ!!み、美紀ちゃん!な、な、何!?美紀ちゃんこそ、ここで何を……」
驚いて、その場に崩れ落ちるように腰を抜かし、ニタリと笑みを浮かべる美紀ちゃんを見上げた。
最初のコメントを投稿しよう!