小野山美子

9/21
前へ
/475ページ
次へ
ミシッ……。 ミシッ……。 まただ。 この軋むような音は、いつからか毎晩聞こえるようになった。 廊下を歩いている音じゃない。 壁から聞こえるその音に、私は何も出来なくて、ただ怯えるだけ。 毎日聞こえる音だけど、私自身に何かが起こったとか、そういうのはないから。 「大丈夫……ジッとしていれば何も起こらないから。隣の部屋には美紀ちゃんもいるんだから」 目を閉じて、両手で耳を塞いで。 この部屋の外側を動いているかのような音にただただ怯えて、時間が過ぎるのを待った。 そして、どれくらいの時間が流れただろう。 ほんの数分のおかしな音、それをやり過ごせたかと思い、そっと耳から手を離した。 おかしな音は聞こえない。 良かった、もう音が消えたんだと、ホッとため息をついて、振り返ると。 「美子ちゃん、何してるの?」 私を覗き込むように、近付けていた美紀ちゃんの顔が、そこにあったのだ。 「ひやっ!!み、美紀ちゃん!な、な、何!?美紀ちゃんこそ、ここで何を……」 驚いて、その場に崩れ落ちるように腰を抜かし、ニタリと笑みを浮かべる美紀ちゃんを見上げた。
/475ページ

最初のコメントを投稿しよう!

5747人が本棚に入れています
本棚に追加