5人が本棚に入れています
本棚に追加
その言葉を最後に視界はブラックアウトし、俺は現実世界へと引き戻された。
夢の中の自分が、どのような答えを出したのかは今となってはわからない。
だが、もしあれが本当に俺自身だったならば、確実にこう答えていただろう。
『そんなことに興味はない』 と。
この世界の殆どの大人達は言う。「今の時代の若者は、何事にも真剣に取り組まず、強い興味を持ったり夢中になることがない」 と。
俺はその若者の中でも特に物事に興味を抱くことができない。
俺は幼い頃から何かに対して強い興味を持ったことがない無関心な性格。
特に叶えたい未来もなければ、これといった夢があるわけでもない。
俺にとってこの世界は中身のないプレゼント箱のようにつまらない。もはやつまらないと言う感情さえ生まれてこない。
もしこの先、本気で夢中になれる事が目の前に現れたならば、面白みもない世界が少しは輝いて見えるのだろうか。
少しの間夢について考えただけでさえ関心は薄れ、程よい眠気が全身を襲う。
重くなった瞼を閉じ、導かれるままに睡魔の世界
へとダイブする――――はずだった。
ギィー。と老朽化により錆び付いた屋上の扉が、不快な音をたてながら開いた。
下の階の開けはなれた教室の窓からは、聞きなれた担任の声が聞こえることから、授業が終了したというわけではないはずだ。
自分以外に、授業をサボってまで屋上に来る生徒を知らないため、疑問を感じたがすぐに頭の中から消え去る。
心なしか、スタスタと此方に歩いてくる足音がコンクリートを通して耳に伝わる。
足音は俺の頭上で止まり、春のポカポカとした気持ちの良い日差しを遮った。
目を開けると――俺の視界には、世界中の男子高校生が求め、狂うであろう魅惑の布きれが飛び込んできた。
微かに垣間見える絶対領域を守るそれは、透き通った海のように美しい水色と、雪のように穢れのない白色のシマシマ模様をした――――――
「パンツ」
「あぁ。パンツだ」
澄んでいてとても綺麗な声が耳の奥へと侵入する。
普通の男なら泣いて喜ぶだろうが、俺には別段興味もないためパンツから目を逸らし起き上がる。
当の本人は恥ずかしがる素振りをいっさい見せず、依然としてその場に仁王立ちを決め込んでいた。
それはまるで荒れ果てた大地に芽吹くイチリンソウのようであった。
最初のコメントを投稿しよう!